描いて作って耕して

農業・陶磁器の魅力をみなさんに伝えていきます。

職人の人材不足問題 市場が縮小しているから は本当か?

前回、職人の後継者不足問題と副業の可能性について触れてみました。

 

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最近はハンドメイドブームの流れもあり少しずつ伝統工芸技術への注目も高まってきている……ことを願うばかりです。

 

さて、よく伝統工芸の職人は後継者不足が問題となっていますが、少しこれについて整理してみたいと思います。

【後継者不足の根拠】

有田町の陶磁器の従事者数は平成16年(1,664人)から平成26年(1,195人)へ約3割程の現象です。経済産業省製造産業局では日本全国のデータもまとめていますが、どこも似たりよったりのようです。

これが後継者不足の数字的根拠となりますが、経済産業省製造産業局は

①産地の高齢化が以前として解消されていない。

②若年層の間に「就労意識の変化」や「将来への不安」が背景にあると指摘しています。(参考:伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の振興施策について 平成20年8月
経済産業省製造産業局伝統的工芸品産業室)

 

【私が有田焼に従事して思うこと】

なんか話がでかすぎてよく分らないですね。

では考えを思いっきりミクロにしてみましょう。私個人が、有田焼の作り手の現場で働いていて思うことを列挙することで、職人のなり手がなぜ少ないのか?考えてみたいと思います。

理由その① 給料が安い

もうめちゃくちゃ安いです。最低賃金レベルです。焼き物業界全体が冷え込んでいるため仕方ない面がありますが、それでも安すぎる。結婚できません。家族を養えないです。私の周りでも「有田に来たけど、家族が養えないから転職する」という人は何人もいました。

 

理由その② 福利厚生が整っている会社が少ない

経済的・人的な余裕がないため福利厚生が整っていないところも多くあります。世の中を見ればいくらでも充実してる会社なんてあるのに、わざわざ自分に不利益な条件の就職を望む人がどれだけいるのか?ちょっと疑問ですね。もちろん、福利厚生の充実しているところもあります。念のため。

 

理由その③ 将来が不安

焼き物業界の景気が向上する将来がなかなか見えないのはつらいですね。少子高齢化や日本人のライフスタイルの変化などを鑑みればこれから消費が上向くとは考えにくい。そこで海外へ進出している窯元もあります。海外市場は今後の成長に期待したいです。

 

理由その④ 技術学習に時間がかかり過ぎ

一人前の職人になるのはかなり時間がかかります。10年とかそんな感じです。未だに見て覚えろの世界なので学習する側も一苦労。もっと技術を言語化したり体系的な知識にまとめ上げたり、科学的学習法を導入してくれと言いたい。

しかもその間お給料も少なく、一人前になったところで手取りがそんなに増える見込みもありません。

 

【それでも職人の世界は魅力的】

だってかっこいいじゃないですか。

 

【政府の対応】

そこで対策として昭和49年公布「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」を政府は打ち出します。

その法律を根拠に様々な事業(補助金の交付、産地指導事業)を展開しているわけです。

ちなみに平成30年度の伝統的工芸品産業振興補助金は7.0億円。

経済産業省のHPからどのような政策を実施しているか見ることもできます。

また、人材育成の観点からは

人材確保及び技術・技法等継承事業があり、有田焼でも工業組合が事業を行っています。まぁ、これも結局見て覚えろな感じの人材育成なんで、めちゃ学習効率わるいですけどね。練習時間の確保と割り切ったほうがいいですね。

 

【職人の人材不足は市場が縮小しているから は本当か?】

それもありますが、決してそれだけではありません!

ネットなんかではよくマクロ的視点で職人の人材不足を論じていることが多いですがもっと成り手の目線があってもいいのでは?

地に足付けた議論、もっとしましょうよ。