描いて作って耕して

農業・陶磁器の魅力をみなさんに伝えていきます。

有田焼のマーケティングってどうなってるの?その③

以前、有田焼のマーケティングのレポートが少ないとぼやきましたが、

 

handpaint.hatenablog.com

 有田焼の市場調査をされた上原義子、高橋昭夫氏両氏により有田焼をSWOT分析したレポートがあります。

引用すると次の通りです.

 

  プラス要素 マイナス要素
内的要因 強み 弱み
日本陶磁器発祥の地としての歴史 機能していない流通
外的要因 機会 脅威
他産業とのコラボレーションによる
商品開発
消費者のライフスタイル変化
海外からの廉価品の流入
伝承問題


引用:伝統的陶磁器の流通と付加価値に関する経営診断
―有田焼と備前焼におけるサービス・マーケティングとその市場調査―

上原義子、高橋昭夫 日本経営診断学会論集16, 1–7 (2016)

 

とあります。私もこの分析には的を射ていると考えていますし、引用元のレポートでは強みである歴史にも、「「伝統」を産地は自負しているが,現実は産地の自己
満足であり,有田焼というだけでは求心力がない」と厳しい指摘をしています。

この点についても私は同意します。

 

さらにかつて消費者のニーズを把握していた問屋が機能しなくなってきているが、現代の消費者の細かなニーズを汲み取れる問屋が求められていると締めくくっています。

 

さて、ではどうすればこのような現状を打破できるでしょうか?

いきなりそんなスーパー問屋が現れるはずもありませんし、現れたところでいきなり窯元がスーパー問屋に耳を傾け企業努力し始めるとも考えにくいです。

 

というわけで私なりに案を作ってみました。

①有田焼全体をプロデュースするマーケティング・街づくりのプロを町が雇う。

 宮崎県日南市が取り入れているやり方ですね。街づくりのプロを高級で雇い入れて見事日南市を活性化させました。もちろん安易な考えでは成功しないでしょう。参入するプロも、プロを受け入れる側も半端ではない覚悟が必要です。

 しかし、それに見合う成果もあるやり方なのではないでしょうか。

greenz.jp

②有田焼にまつわるビジネスアイディアの募集

 よくある手ですね。

 いろんな自治体がやっていて既に手垢がつきまっているやり方ですがまだ有田でそういうものをやっているのを見たことが無いです。

 消費者の生の声を聴けるチャンスでもあります。比較的安価にやれるのでとっかかりとしてはいいのではないでしょうか。

 

③定期的なマーケティング講座の実施

 現在、窯業大学や工業組合では技術伝承のための講座が用意されていますが、マーケティングについての講座はないです。現代的な消費者のためのデザイン講座なんてものもありません。

 もっと、ハード面だけでなくソフト面に焦点を当てた講座を説教的に実施することで消費者目線の商品づくりができる人材育成をしてもいいと思います。

 

最近は有田の複数の窯元がアメリカ市場進出を狙っているようですが、日本のニーズを把握することすらできていない状態で未知の市場に進出するのもいかがなものかと思います。

もちろん、個別には海外のニーズをきちんと把握し企業努力をしている窯元も知っています。しかしそれはホンの一握りです。

 

かつての有田焼には強力な問屋がバックについており海外のニーズについても彼らが詳しかったため、密に連絡をとりあって海外のニーズに合うよう商品開発をしていった歴史があります。

だからこそ、有田焼(オールド伊万里)は世界に進出することができたのです。

 

もし今後もアメリカ市場進出を検討し続けるのであれば(複数の窯元がプロジェクトでやるなら尚更)先述した現代的な問屋の存在が必要不可欠となるでしょう。

そうでなければアメリカ市場進出を促す有田焼を取り巻く外部の者だけが利益を得る結末になる可能性もあります。